期待していたサイケなヒッピー文化と出逢うことはできませんでしたが、お腹は減ります。
さて、晩御飯の準備しよう。
この夜は雨の予報なので、料理をする気がさらさらなく、調理器具は用意していません。近くのスーパーのお惣菜で済まそうと考えていました。
しかしこれは甘かった。
村にコンビニがないことはもちろん想定していましたが、更にスーパーマーケットすら見当たりません。
近くの商店には肉や野菜などの食材やお土産品こそあるものの、出来合いの惣菜なんて扱っていませんでした。
なんでも当たり前にあると疑いもしなかった私かボケていました。しょうがないので、今晩のご飯は道の駅で買うポテチと発泡酒でしょう。
がっかり肩を落として品定め。
すると、明らかに他の人とは風貌が違う人がお店に入ってきました。
きっと、彼女は自然派な人でしょう。あとから来た同じ雰囲気の若いヒゲ男と軽い挨拶を交わしていました。柔らかそうな革製のブーツが印象的です。
“本当にいるんだなぁ。”
有名人に出会えたような高揚感です。感激です。
自己表現のためのファッションヒッピーとは違う佇まいです。
それを超越しているようです。
なんというか、農耕的。彼らの姿に、妙に納得がいきました。
自己完結。いいものを自然に。たまに分かち合いっていう言葉が思い浮かびました。
もう少しだけ、彼らのことを知りたいと様子を伺っていると、村の特産品コーナーの中で『ヤギのチーズ』がひとつ残っていることに気づきました。
ヤギの乳で作ったチーズ。今まで食べたことがない。
なんだか無性にこのチーズを食べてみたくなって慌ててレジに急ぎました。
気づくと先ほどの人たちは軽トラックに乗って店を出ていきました。
私もチーズと信州のワインを手に入れて、店を出ます。
そろそろ日が暮れる。
次の目的地は、寝床です。
この不思議な村の山の上にあるキャンプ場です。