関東平野の果てブログ

20代はじめに関東平野の果てに隠居し、楽でラフな生活を模索する30代です。

ヤギのチーズ5

 


寝床は、雨予報でしたので、屋根のあるところが良いと考えました。

そんな条件を満たすキャンプ場は山の上の上の上。

 

崖の上のウシィ。

 

 

最後の民家は何キロ前だっただろうか。

 

 

 

1時間弱。登っても登っても山です。

途中誰1人ともすれ違いませんでした。

 

やがて狭い道から更に分岐して、少し広くなっているところに出ました。
そうです。ここが今夜のキャンプ地。

標高約2000mらしい。

いるのは俺だけ。

 

…ちょっと寂しい。てか怖い。

 

 

ご丁寧に熊注意の看板もあり、私の心をエグります。 

 

携帯の電波入らないから助け呼べないな。

雨強く降って土砂崩れしたら帰れないな。

てか建物の名前が避難所ってなんだよ。何から避難すんだよ。

 


今更ですが、そもそも自分は深い森に入ると四方八方から視線を感じる気がして、落ちつかない性分です。

クワガタが大好きなのに昆虫採取に行かないのもそのためです。

山にいる獣も人もオバケも怖い。

海辺なら釣りしながらいくらでも寝られるのにね。

 


でもまあ、熊にさえ出会わなければなんとか乗り切れるでしょう。今夜は肝試しだ!酔っ払っちまえば解らねぇ!と意気込んでザックからぬるいビールを取り出す。プルタブを開ける。

プッシャ〜。幸せの音。

ちょうど良い切り株に腰をかけて一口目を味わおうとする。

 

 

 

切り株の上になんかある

あれ?ウンチ!誰のかな?

鹿はチョコボールみたいなウンチのはず。

イノシシの短い足では、こんなところにウンチできないはず。

人間のものとも大分違う。

牛にも似てるけど、いるわけないやん。

とすれば、これはもう熊さんとしか思えない。
寝床からすぐそこの話です。

 


ここで自分はポッキリと心が折れて、開けた缶ビールは口をつけず、逃げるように山を下りました。心が折れる音、マジで聞こえました。

もう口が裂けても『山に篭って修行したい』なんてイキったこと言わない。

尻尾巻いて逃げる。 

 


途中、日が沈み雨が本格的に降り出した。

大鹿村の次のまちにある道の駅に止まる。雨は寒い。感覚が無い手でテントを張り、ここで一晩を過ごすことにする。

 


テントの中で夕方に買ったヤギのチーズとワインをやっと取り出せる。

 


思い返せば大鹿村には数時間しかいれなかったけど、このチーズには大鹿村がギュッと詰まっているような気がした。

半分だけ切りとり、食べてみた。 


味はラム肉のような草食動物特有の風味があり、自分好みのものだった。

今日出会ったものを思い出して、自然に対しても人に対してもありがたいと思えるような味だった。

ついつい酒が進み、ワインを一本空けて寝た。

 

残りのチーズはお土産用とした。