翌朝。たっぷりと雨が降り続いている。
雨音で寝不足だけれども、いつまでもテントを広げていられない。撤収していると、家から持って来た雑穀米のおにぎりがあるのを思い出した。うまいかまずいか解らないけどペロっと食った。
さて、帰ろう。写真後方に見えるクッサい濡れた靴下は昨日履いたもの。
今日はこれを再度履いて帰らなければならない。
不幸である。
帰り道、覚悟はしていたがやっぱり雨。苦痛。
どれくらいかというと、ゴーグル無しで荒波の海を泳いでいるようなものかな。
顔に当たる雨粒は痛く、目も満足に開けられない。波のように押し寄せる重い風邪はバイクをふらつかせ、同時に身体の先の方から体温を奪う。
いつもならひと息で進む距離も永遠のように感じられ、我慢、我慢のライディング。
ようやく家につくと、濡れたテント類を最低限だけ広げ乾かし、あとは風呂にザブゥンと浸かって暖かい布団にくるまる。
とてつもない安心感に包まれて『やっぱり我が家がイチバン』とくそつまらないセリフが魂の底から出る。
ひと眠りして起きると、夕方。
まだ大鹿村のことを考えていた。
なにげなく図書館に出向いて山暮らしの本を借りてきてしまった。
大鹿村の山に未練があるのかもね。
明日からまた仕事がはじまる。
2、3日もすればきっと忙しさに追われ、この本に触る気さえなくなることをわかっている。
だから今だけ、ベランダで本を眺め、ヤギのチーズを転がす。
長野の風は気持ちいいと思った。